<パストライブス>ー愛ってなんだろう、嫉妬ってなんだろう

12歳のヘソンとノラは、お互いが好き。しかし、ノラは親の都合でカナダに移住する。初恋の終わりだ。12年がすぎて24歳になったヘソンとノラはオンラインで再会する。初恋の思い出と過ぎてしまった時間、お互いに何かを感じるのは確かだが、それぞれの生活があり、ドキドキする再会も長くは続かない。また12年が過ぎた36歳のヘソンとノラは再び出会う。ヘソンがニューヨークに来るのだ。だが36歳のノラには、アーサーと言うパートナーがいる。

ニューヨークで出会うヘソンとノラ、それとアーサー。12歳の初恋と36歳のパートナー。この微妙な三角関係は修羅場にでもなりそうだが、そうでもない。お互いの存在が少し緊張感を生み出すことはあるが、嫉妬と独占欲で狂ってしまうようなことはない。むしろ3人は、自分の感情とお互いの存在、それぞれの関係に向き合うのだ。

監督のセリーヌ・ソンはあるインタビューで、「ふたりがデートをすることを描いた物語ではないし、ふたりが愛し合うことを描いた物語でもありません。お互いを愛することができる、3人の物語なんです」と言う。私もそう思う。「あなたが誰のモノなのか」ではなく、「あなたがどういう存在なのか」に焦点を合わせる「愛」の物語だと思う。

だが、「なにそれ、不倫?」だと言われることもあるだろう。なにしろ私たちは「男と女の友情ってあり得る?」のような質問があふれる世界に生きているのだ。誰かを所有したくなる、独占的な関係が「恋愛」の基本になっているのか。この映画が描く「愛」が正解ではない。愛ってなんだろう、嫉妬ってなんだろう。


『パストライブス/再会』
監督・脚本:セリーヌ・ソン
公開日: 2023年6月2日 (アメリカ合衆国)
配給:A24
公式サイト:https://happinet-phantom.com/pastlives/