まずは演奏と曲調に注目する。
前奏は落ち着いたアコースティックギターのアルペジオがボンゴやドラムと共に進んでいく。そして演奏が止まると同時に管楽器が勢いよくならされ「やまんばが来るぞ!」という歌詞がタイトルコールのように歌われ曲が始まる。演奏だけでいえばまさに「マンボ」らしいのだが、落ち着いたジャズのように聞こえるし、3分30秒頃からは、折坂悠太の歌い方、歌詞そしてメロディなどの癖や哀愁で、日本の童謡のようにも聞こえる。このような様々なジャンルの曲が合わさっている曲調は折本悠太の2018年のアルバム「平成」の中の何曲かに見受けられる。
そして次に歌詞に目を落とす。
面白いことに歌詞にもそのようないくつかの要素が複合しているように見える。まずイントロの「語り」ではヤマンバの形容やその恐ろしさ、そしてAメロでは「山道」や「月明かり」「石から岩へ」など状況を表すような歌詞、そして盛り上がりどころではヤマンバから言われた言葉などが多い。そこには緊迫感を持たせると同時に盛り上がりを誘うような効果があると思えた。そして物語がヤマンバと共にマンボを踊る中で、3分30秒頃に急にヤマンバの視点へと持っていき、それもかなり感情的で感傷的な内容だ。これは先ほどの日本の曲特有の哀愁やメロディに載せられていて視点がや曲の感情が変わったことを示しやすい。
ジャンルを絞らないことで掴みどころがないようで、その実コンセプトや伝えたいストーリーがしっかりと構成されているので、すっと脳に入りやすいのがこの曲の魅力だと自分は思う。
『やまんばマンボ』
作曲・作詞:折坂悠太
https://www.youtube.com/watch?v=6Z4j1TfRKVo