サンバじゃないならそれはもう『マツケンII』

令和に入り、音楽の多様化は進歩の一途を辿っている中で、この『マツケンサンバII』を聴いてみると、そのお祭り感に驚く。2004年に生まれたこの曲は今もなお、異様な輝きを放っている作品と言えるだろう。

そもそも、この楽曲はサンバではないというのが、その輝きの一端を担っていると感じる。まず、マツケンサンバで最も耳に残ると言っても過言ではないフレーズが『叩けボンゴ』や『響けアミーゴ』であるが、いずれもこの二つはスペイン語である。サンバの本場ブラジルで使われるのはポルトガル語であるため、サンバ感は薄いだろう。

さらに、この楽曲に使われている音楽やそのリズムにはキューバのルーツを多く見て取れる。つまり、これらはラテン系と言った方が正しい。

『マツケンサンバ』は逆にどこがサンバらしいのか、それは曲から少し離れたMVだろう。YouTubeに上がっているMVに目を向けてみると、煌びやかな松平健の後ろで女性たちが露出度の高い衣装に身を纏い、踊っている。全体的にキラキラとしたその映像からは、これでもかとリオのカーニバルのような雰囲気を受け取れるだろう。

つまり、この楽曲は歌詞に存在する少しだけのブラジル感とこのMVのダンスの要素だけで『サンバ』と宣っている非常に大胆でチグハグな楽曲だ。

20年という長い年月の中で『マツケンサンバII』はSNSなどで「元気の出る音楽」として受け入れられている。そこには松平健の生み出した殿様とサンバという組み合わせという、歪とも言えるコンビネーションには、真顔の情熱が込められており、今の音楽とは一線を画す人の心を動かす力が込められているだろう。


マツケンサンバII/松平健
作詞:吉峰 暁子
作曲:宮川 彬良
リリース:2004年7月7日