#1「工場夜勤-始動編-」

これから私のバイト放浪記の連載が始まる。

どういった形で連載を行うか考えたのだが、私が今までしばき上げてきた幾多ものバイトの職場ひとつ一つにフォーカスをあて、当時の実際に目に映った光景と私の思いを添えて記憶ある限りここに残していく。

記念すべき第一回を飾るのは食品工場・深夜帯勤務だ。

まず工場夜勤で働く経緯を話しておくと、私は大学の最初の一年で百万円以上〜を稼ぐと誓った。18歳の小僧が夢を叶えるために考えた結果だ。

そうして大一の夏休み期間、YouTubeのおすすめに出てきた「キツいけどゴリゴリ稼げる」と言われる工場夜勤に挑むことを決めた。

面接では「毎日二十四時間働けます!」といった結果一人だけ即日採用された。

そして初出勤、食品工場に初めて足を踏み入れた。

メガ敷地にクソでか工場、そして真っ白電灯に一ミリも外が見えないようになっている内装。「今日はサンドイッチ課でお願いします」そう言われて着いたのは爆音で無限にサンドイッチを吐き出す機械とベルトコンベアがある部屋。

ここまで絶望的な気持ちにさせてくる内装に、俺はちょっと泣きそうになった。同時に職場選びをミスったことに気づいた。

そして私はパックされる前のサンドにソーセージを置く仕事だった。これを仕事と言っていいのか。

意外にもベルトコンベアが早くてソーセージを置くのが難しかった。

一時間が経った頃、俺はソーセージ置き職人になっていた。俺のソーセージ捌きは早すぎて見えなかった。

残り11時間、あまりにも退屈だったので様々なことを考えた。

自分が生まれてから最古の記憶、中高のバスケ部が辛すぎて失禁した記憶、男の後輩に告白された時の記憶、今日の朝ごはん、正義とは何か、悪とは何か…

まあこんだけ考え事をしたならそこそこ時間は経っているだろう。

20分しか経っていなかった。俺はちょっと泣いた。

そこからはもう自分で自分を制御できなくなり、ただ無限にソーセージを置きながら思考を繰り返す残念なソクラテスになっていた。

それでも時計を見るたび20分しか経ってない。そんなことを11時間繰り返した。

そして退勤の時は来た。

まっすぐ歩けないのだ。着替えなければいけないのに、着替えようとすると手がソーセージを捌こうとする。

そして工場を出て12時間ぶりに空を眺め外の空気を吸った時、俺はちょっと泣いた。

不思議なことにパン工場で宇宙の真理に辿り着くほどした思考は、一ミリも記憶残ってなかった。

俺は決心した。

絶対明日には辞めよう。

次回へ続く