音でつながるフェス

まだ暑さがまだ残る秋に、京都市左京区にある一乗寺で秋祭りが開催された。その名も「一乗寺フェス」。

秋祭りではあるが、なんでフェスなんだろうか。そう思い、私はフェスの定義について調べてみた。

”来場者にさまざまな体験を提供する大規模なイベントのこと”

それはさておき、その一乗寺フェスで私が所蔵するゼミが企画したのは、子どもも大人も一緒になって音を楽しむ2つの企画。
ひとつは、身近な素材を使って楽器を作る「音あそびワークショップ」。
もうひとつは、その作った楽器や持ち込んだ打楽器を盆踊りのリズムに合わせて叩いてみて、そのリズムを知っているポップスに合わせて演奏する「ドラム盆」。

「音あそびワークショップ」には、合計72人の子どもたちや大人が参加してくれた。私は受付をしていたのでその様子をほんの少し離れたところからみていたのだが、「できた!」と喜ぶ子どもたちや、実際にその場でできた楽器の音を出してみたりと音を楽しんでいた。

その後、作った楽器や持ち込んだ打楽器を使って行う「ドラム盆」が始まった。

このドラム盆という名前は、私たちが一乗寺にある児童館に音あそびワークショップを行う際に、みんなで「ドラムサークル」という参加者が輪になって打楽器・パーカッションを即興で演奏するアンサンブルを行なっていることから、「ドラムサークル」×「盆踊り」で「ドラム盆」となっている。

児童館でドラムサークルに参加していた子どもたちだけではなく、まだリズムを理解できないようなとても小さい子でもお母さんやおじいちゃんなどと一緒に参加してくれていた。

実際にやる前は、盛り上がってくれなかったらどうしようとか、参加してくれる人が少なかったらどうしようとか、不安で気持ちが押しつぶされそうだったが、想定していた悪いことは起きることもなかった。その場のほとんどの人たちが楽しそうにドラム盆で音を楽しんでいた。

イベントが終わって静かになった公園の片付けをしながら、「フェス」という言葉をもう一度思い出した。
“来場者にさまざまな体験を提供する大規模なイベント”。
けれど実際に体験してみて感じたのは、「体験を提供する」というよりも「体験を一緒につくる」場所だったということ。

参加者も、地域の人も、私たちも
──音でつながるフェスの一部になっていた。