喋るカエルに黒い半透明のバケモノ、とても大きい龍など様々なキャラクターが登場する『千と千尋の神隠し』だが、魅力的なのはキャラクターだけではない。本作の舞台となる温泉旅館「油屋」のモデルとされているのは長野県に実在する温泉施設、主人公である荻野千尋の両親が料理をバクバク食べることでお馴染みのアノ屋台の連なる場所は台湾がモデルと言われている。
そんな美しい世界観が描かれる千と千尋の神隠しの世界だが、今回はそんな世界をモデルと照らし合わせて、改めて観てみようと思う。
しかし、千と千尋の神隠しではモデルと言われている程度で、参考にされた建物などが複数あるだけとなっている。今回はそれらを一緒くたに『モデル』というが、実際には我々視聴者がモデルだと言っているだけであることを頭に入れて読んでいただけると幸いだ。また、今回モデルとして言及する施設も全て筆者がインターネットなどで検索したものを基に書いているため、注意して欲しい。
油屋/長野県「金具屋」
本作の舞台にして、ハクに連れられ、働くことになるのが神々の温泉旅館「油屋」だ。
改めて油屋を見てみると、とても荘厳で煌びやかな和風建築だ。昔ながらの趣ある建物かと思えば、中では様々な機械やエレベーターなどの絡繰が無尽蔵に動いており、モダンさも感じる建物だ。宮崎駿はこのような建物を「俗悪」と表している。
しかし、このような建物に憧れを感じるのもまた事実だと感じる。
特に私は鎌爺が薬湯を作るための湯札を受付から鎌爺の元に送る仕掛けがとても好きで、幼少期から十回ほどはこのシーンを見ているが、今でも少しワクワクする機構だ。いわば、大きな機械などの中身がどういう仕組みか気になるみたいな興味がつきない仕掛けだ。

食堂街/台湾九份
この食堂街は千と千尋の神隠しを代表する場所の一つだと個人的に感じる。
ここから荻野千尋の”千”としての物語が始まる。この場所は先ほど語った油屋とは打って変わって少し異国情緒のある風景となっている。
ここも明確なモデルは明言されていないが、よく言われるのは台湾の九份という場所だ。この話は割と有名で様々な場面で聞く話だが、確かに見比べてみても似ているように見える。ただ、この手の飲食店が並ぶ道は温泉街などに行けば割とよくみる風景でもある。
それは置いておいて、この場面は両親が豚になったり、やけに美味しそうな料理だったりと、観た人に少なからず印象を与える部分だ。
「お父さんが食ってたあの白いブヨブヨは何?」「なんで豚になるの?」など様々な疑問と共に、この作品にのめり込まされる場面だ。

豚になる店/東京都『鍵屋』
ちなみに千尋の両親が豚になってしまう店にもモデルがあるらしく、これは東京の鍵屋という『江戸東京たてもの園』の中にある建物だ。元々は居酒屋だった店がたてもの園に移築された形らしく内装も作中と同じく、入り口からカウンター席がそのまま見える形になっている。
ちなみにこのたてもの園には他にもモデルになった建物があるとされているので、一度足を運んでみたい。
