となりのトトロ論

「となりのトトロ」はジブリ作品に中でもアイコニックな作品だ。

その証拠に「スタジオジブリ」のロゴ、映画が始まる前に表示される制作会社のイラストには「トトロ」の絵が抜擢されている。そして2024年の朝日新聞の「子どもに勧めたいジブリ作品ランキング」では全体の48%というほぼ半数を占めて一位に座っている。ジブリのショップに足を運べば必ずトトロの人形が目に入る。

なぜトトロはこんなにも人気で、象徴的なのか。

重要になるのは「となりのトトロ」に出てくる非人型のキャラクターのビジュアルだ。ここでははとなりのトトロが持つ特有の魅力を「トトロ論」として提唱する。

『トトロ』

まずは上記でも扱った「トトロ」の魅力だ。

まずトトロとてつもなく大きく、なんの生き物かわからない点や表情がありつつも読み取れない点から森で遭遇したらまずは恐怖の印象を抱く。しかし劇中で最初にトトロに遭遇したメイが怖がらずトトロに抱きついたことで、トトロに新しい印象が生まれる。

「かわいい」ということだ。

よく見たら全身モフモフな毛で覆われているし、少し太り気味の体は丸く手足は短いため攻撃性がとことん無い。そのため多くの人は先ほどと異なり「大丈夫かも」という感情を抱く。さらに表情がないことからこちらへの興味関心もないことが窺える。それもまたメイが行っていたようにこちらからトトロに構うことで、今度はこちらからトトロへの興味が湧く。なんの生き物かわからない点もこちらの興味関心を惹きつける要素になる。総じてトトロには「近づいて、触ってみたい」と思わせる魅力がそのビジュアルに詰まっている。

このようなトトロを作り上げたことは「となりのトトロ」という作品の非現実的かつ、創造性の高いものに押し上げた。

『猫バス』

猫バスは作中の終盤に主人公を助けるべく登場した。猫バスの大きな魅力は「猫なのにバス」という点なのだが、真意はもっと奥にある。猫バスの内装は非常に現実のバスに近いのだが、やはり猫のためモフモフの絨毯のような毛で構成されているし柔らかそうだ。そして猫バスは超早い。

さっきのトトロとは異なり表情も豊かだ。そのため少し騒がしくエキサイティングな印象を持たせるが、それはかえって「ジェットコースター」のような魅力を見るものに与えさせる。総じてまずはこの世には無い創造性のある生き物だということに付随して、楽しそうで乗ってみたいという印象を抱かせる。

『まっくろくろすけ』

「まっくろくろすけ」は上記2種とは異なり、主人公たちが新しく住む家に出てきたキャラだ。「まっくろくろすけ」はいわゆる「ホコリ」や「黒ずみ」的な立ち位置だ。劇中でも家の隅から出てきて、メイに潰されたら黒い汚れとして手にこぶりついた。ビジュアルの魅力は小さくて丸い、そしてまん丸の大きな目と言ったところだが、「まっくろくろすけ」が魅力的なのは同一の生き物がたくさん出た時、小さく同じ形の生き物がたくさんいる視覚的なおもしろさだ。そしてそれは現実のホコリと同じではあるのだがそれを「生き物」として見ることはないし、こうして可愛いという印象を抱かせる創造性には驚きだ。

以上のキャラクターだけで「となりのトトロ」という作品のビジュアル、視覚的に如何に創造的で多くの要素が魅力的なのがわかる。

視覚的な魅力が象徴的なため子供達もわかりやすく、ジブリのアイコンに抜擢される理由も頷ける。