連載『ゲーム、やらずにはいられない』#3 1匹の蝶の羽ばたきが、遠くで竜巻を引き起こすか?『ライフイズストレンジ』

 バタフライ効果という言葉をご存じだろうか?何かしらの力学系の状態に対して、少しの動きを加えるだけで、その後の状態は大きな変化を及ぼすというもので、カオス理論における「初期鋭敏性」と呼ばれるものだ。
 もう少し簡単に言えば、「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな感じ。よく言われるのが「一匹の蝶の羽ばたきが、遠くで竜巻を引き起こすか?」という問いである。
 なぜ、この話をしたかといえば、今回取り扱うゲームは、そんなバタフライ効果に通ずるものだ。いわゆるマルチエンディングと呼ばれる結末がプレイヤーの選択によって、ストーリーの行く末が変わっていくゲーム。バタフライ効果をテーマとしていることもあって、最初にバタフライ効果の話を少しだけしてみた。
 今回はそんなバタフライ効果をテーマとしている作品を挙げる。冒頭にはその作品のストーリーのあらすじも載せる為、プレイしてみたい人は是非参考にしてほしい。

ライフ イズ ストレンジ/DONTNOD 〜もしもう1つの人生があったなら〜
・あらすじ
 19歳の女学生であるマクシーン(マックス)・コールフィールドは5年前、地元から離れてシアトルへと発っていたが、一ヶ月前に地元のオレゴン州「アルカディア・ベイ」へと戻ってきていた。
 アルカディア・ベイの高校の写真科に通い、普通の生活を送っていたがある日、トイレで青い髪の少女と街の実権を握るプレスコット家の長男ネイサンが口論をしているところを発見。隠れていると青髪の少女がネイサンに射殺されたところを目撃してしまう。しかし、気がつくと授業中の教室へと時間が戻っていた。
 授業後、急いでトイレへ戻り次は非常ベルを鳴らし、少女を助けることに成功する。その少女は5年前地元を離れた後から連絡を取っていなかった親友のクロエだったことが後から判明する。
 時間を巻き戻す能力が発現したマックスとクロエを中心に、時間を遡る能力を手に入れたマックスの周りはやがて変化していき…

 本作はフランスのゲームスタジオが開発したアドベンチャーゲームである『LIFE IS STRANGE』である。このゲームは、他にも『TRUE COLORS』や『2』もあり、初代の前日譚となる『ビフォア ザ ストーム』、10年後を描く『ダブルエクスポージャー』などもあるが、今回は初代このゲームは僕がマルチエンディング、そしてバタフライ効果という言葉を知るきっかけになったゲームである。
 本作はバタフライ効果をテーマとしている描写が多分に含まれている。作中のキャラクターもバタフライ効果について発言するシーンがあるし、ゲーム最序盤では青い蝶々が主人公の目の前に泊まるシーンや、オープニングシーンで大きな竜巻に巻き込まれる夢を見るシーンがあったりと、バタフライ効果の問いを連想させる描写がある。

 最初に触れたように、マックスは時間を巻き戻せる。これによって、様々な選択肢を巻き戻して、選び直すことができるようになり、何かしらの選択を行った後に反応をみて、巻き戻して選び直すという芸当も可能になる。
 大事な選択肢に関しては画面にエフェクトがかかり、わかるようになっていたり、選択肢によって未来が変わった場合、UIとして蝶々のアイコンが表示される。
 そしてゲーム中盤。マックスは大学で写真を学んでいるのだが、今まで撮った写真を凝視すると、その写真を撮った当時までタイムリープが可能になる。これにより、その写真を撮った当時の選択をやり直せるようになり、その結果今まで撮った写真が選択し直した世界線で撮った写真に置き換わるという描写が発生し、改変された未来に戻ってくる。
 これはプレイヤー自身もその選択をしたことで大きく未来を変えてしまったという感覚に陥る。
 していることとしては、少しだけ巻き戻して選択肢を変えているのと変わらないが、結果だけを見ると変化に大きな違いがあり、これはまさにバタフライ効果のテーマとされる”初期条件のわずかな違いが予測不能なほど大きな結果の差を生む現象”だろう。
 プレイヤーはマックスを動かし、選択し、時間を巻き戻すという操作だけなのだが、ストーリーはやがて大きく動いてしまうそのギャップがとても面白い作品である。

 この作品はそんなタイムリープ物としてだけでなく、主人公・マックスと5年ぶりの再開時やさぐれてしまっていたかつての親友・クロエの友情なども切に描かれており、非常に後味の良い良作となっているの是非一度プレイすることをおすすめする一作だ。