みんなそういう時期がある…?

今回インタビューしたのは、眞鍋由蔵(以下、M)さん。彼をインタビューする前に、私の話をする機会があった。色々話していくうちに、私の病んでた時期を話すことになった。そこで、彼はちらっと、「私にも病んでた時期がある」と言った。私の話が終わって、彼へのインタビューが始まった時に、私は聞きたかった。


──去年の1年間、病んでた時期があったといったけど、それを聞いてもいいかな。

M:高校卒業してインフルエンサー(音楽系の)になりたくて。大学1年生の時にめっちゃいっぱいお金を貯めた。去年(2回生)から音楽活動を始めて、今も(曲を)出し続けている。でも、どういう感じにやっていいか分からなくて。自分のやりたい感じで最初やったけど、全く有名にならなくて、広がらなくて。有名な人がやっているようにやったけど、それがあまり楽しくなかったっていうか。ちょっと疲れちゃって、心的に。
それをやってるうちに、もう何が好きなのか分からなくなっちゃったし、自分のことはあんまり好きじゃなくなったみたいな。それが去年の闇の1年間だったね。でも、だんだん、なんか落ち着いて考えるようになって。それで進めるようになった感じかな。

──そうなんだ、自分で思っても行動力あるほう?

M:思ってたね。お金を貯める時までは。疲れた、うわ、疲れたーと思い始めた時からは、「俺も人間だったかー」みたいな。「俺はスーパーマンではなかった」みたいな。

──「人間だったかー」というセリフいいね。

M:どうやら、70億人のうちのひとりだった。

──それね(笑)。それ気づく時ってあるよね。

M:ある、めっちゃある。

──自分ってなんか他人と違う存在かと思ってたら、いや、違いました。みたいな。

M:実際にそれをやってみるとわかるよね。他人と違うと思ってた要素をやってみると。「いや、同じだった」みたいな。

──去年の闇の時期に、自分があまり好きじゃなくなっていたと言ったけど、そういう時期を経て、今はどう思っている?

M:今か。お金貯めてた時期とかは、「やった、貯めたー」みたいな。すごい自己肯定感が上がったけど、今は落ち着いて考えるようになったね。考えたら、超嫌いでもないし、そりゃ超好きでもないし、自分が何が好きか明確に分かるわけでもない。でも、全部何も好きじゃないという状態でもないな。何かしらちょっと不安。でも「これがちょっと好き」って思い出してきたし、ちょっと頑張っているから、自分でもそんな悪い状態じゃない。落ち着いて考えるようになったね。病気が治るみたいな。徐々に治っていく感じ。

──今は、肯定もあるし否定もあるみたいな。

M:そうそう。これはね、お金を貯めすぎた時に逆に全部上がりすぎちゃって。

──はい(笑)。

M:ハイになっちゃったから、下がりだったのかも知れない。

──人ってそうだよね(笑)。

M:ずっと上がりだったのが、ウェイーって下がり。やりすぎちゃったのかも知れない。上手くいきすぎちゃったのかな。

──絶対大変だったと思うし、わざわざ辛い経験をする必要はないと思うけど、今聞いた感じ、上がりもあったし、次に落ちるところまで落ちる、というのがあったね。

M:そうだね。経験、そういうのがあったね。


よく「これが楽しかった」「これが良かった」という話をすることはあるが、「これは辛かった」「これは大変だった」という話をすることは少ない。「元気?」と聞かれた時に「元気じゃない」と答えることがあまりないのと同じだ。
だからこそ、その話を聞けて嬉しいのだ。「俺も人間だったかー」と思う彼や、お金を貯めすぎてハイになり、そこから下りを経験する彼や、バランスが崩れてから少しづつ治っていく彼のこと。このインタビューで彼のことを知るようになったとは言えないが、眞鍋由蔵という人が立体的に見えてきた。