北山第2のコンサートホール

植物園、それは身近で森を感じられる場所である。目の前に広がるのは植物園ではない。森だ。だが、私にとってそこは、コンサートホールのように感じられた。

チケットをみせ、中に入る。そこに待っているのは、綺麗な花々で彩られたエントランス。

少し進めば、背の高い木に覆われる。太陽が葉っぱで隠されほんのり暗い空間に、葉の重なる音やひとの話し声、鳶の羽音が聞こえてくる。

周りを覆い隠す木々

さらに進むと獣道らしき道が広がる。それは私が獣であるかのように通りたくなって通れば、先ほどの葉の重なる音だけでなく、自分と触れた時の音が聞こえてくる。

ほんとに通れる? この道

その景色は普段見ることのできない、感じることのできない不思議な感覚に襲われる。

獣道を通り抜け、次にきこえたのは、水の音。ため池に流れ込んでくる水流の大きな音とかすかに聞こえてくる何か水の中で動く音。

植物園を歩いていれば、さまざまな地面を歩く。土の上、葉っぱの上、石の上、木の上。自分で奏でる楽器を変えているかのようだ。こんなこと植物園で考えているのはきっと自分しかいない。でも、私の中でここは植物園ではなく、コンサートホールのように感じていた。

コンサートホール、そんな中にポツンと別の空間が存在していた。

それは植物園にある温室。これは音楽ホールというより、観客自身が物語の世界に入り込む没入型エンターテインメントであるイマーシブシアターのように感じた。

別世界への入り口

世界を旅するかのような物語。そこでは日本では、というより自分の周りではほとんどみることができない植物の世界が360度広がっている。

──マングローブなんて、ゲームの中・テレビの中でしか見たことがない。カカオなんて日本に生えているとは思えないし、そもそも見たことすらないし。

そんな常識が覆されるような景色が目の前に広がる。そのとき私は思ったのだ。

「私は今熱帯の世界に没入している」

このサボテン群生地を見て誰がここを京都だと思うのだろうか、ここはメキシコの砂漠なのだ。

メキシコのサボテンたち

温室によって蒸し暑かったり、寒かったり、暗かったり。あの狭い空間にはたくさんの世界が広がっている。そんなもの、植物園の温室なんてぬるい言葉ではなく、イマーシブシアターと呼ぶべきではないか。

植物園であることを忘れて、一度入ってみてほしい。いろいろな植物が生えているなと思うだけではなく、さまざまな感覚を通して楽しむことができるだろう。