2025 4Q 制作ノート 吉田蒼


作成日:2026.02.10

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3Qから引き続き、「現象」を主題として制作に取り組んだ。
前回扱った水蒸気の作品では、現象そのものを扱っている一方で、多くの電力や装置に依存している点に課題を感じていた。
そこで今回は、人為的な制御に頼らず、自立して作用する現象を作品として扱いたいと考え、酵母を取り上げた。

そこで今回は、電源に依存せず、自律的に変化し続ける存在として酵母を取り上げた。
制作にあたっては、まず発酵がどのような仕組みで起こっているのかを調べ、酵母の活動によって生じる膨らみや変化について理解を深めた。
その過程で、「ゾウの歯磨き粉」と呼ばれる化学実験を行い、反応による膨らみ方を確認しながら、自分がどのような変化や表現に関心を持っているのかを探っていった。

さらに、サワードゥ種を実際に育て、日々どのように発酵が進んでいくのかというプロセスを観察しながら制作を進めた。
発酵は一定ではなく、温度や湿度、時間などの環境条件によって振る舞いが大きく変化する現象であり、その不安定さや予測不可能性そのものが興味深い要素であると感じた。

最終的な制作では、酵母が膨らんでいく様子そのものを見せることを目的とし、発酵を促進するための環境条件に焦点を当てた。
温度を与えることや乾燥を防ぐことなど、人為的な操作を加えることで、酵母が本来持っている力がより顕在化する状況をつくり出した。
ここでは、酵母を完全に制御するのではなく、その働きを促進し、補助する存在として人が関わることを意識している。この制作を通して、自律的に変化する現象と人為的な操作との関係性についての基礎的な手応えを得ることができた。
今後は、環境条件の設定や操作の精度を高めながら、変化し続ける現象をどのように作品として成立させていけるのかを引き続き探っていきたい。

一方で、こうした現象をどのように制限し、あるいはどこまで操作するのかという点については、まだ十分に自分のものにできていないと感じている。
完全に制御するのではなく、現象の自律性を尊重しながら、人がどのように関与するのか、その距離感やバランスは今後の制作における大きな課題である。

今回の制作を通して、酵母という現象についての理解がまだ十分ではなく、変化し続けるシステムに対して自分がどのように介入すべきか、またどこまで操作することができるのかという点について多くの課題が残った。
今後は、酵母そのものの性質や発酵の条件についてさらに知識と経験を積み重ねながら、現象を単に観察するだけでなく、どの要素に働きかけることで変化を導けるのかをより明確にしていく必要があると感じている。



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