2024年3Q 制作ノート 廣瀬茅香里


作成日:2024.12.09

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【取り組んだ内容】「探してフロッタージュ」の制作 / 「ふろったいぽ」の改良 / ワークショップの開催

探してフロッタージュ

・背景
これまで継続して取り組んできたフロッタージュと漢字の間違い探しを組み合わせた、フロッタージュのプロジェクト新作

・制作テーマ
さらに新たなフロッタージュと表現のレパートリーの開拓
漢字にまつわる馴染み深い遊びをリサーチする中で、似ている漢字が並ぶ中から異なる漢字を探し出す遊びに着目した。フロッタージュの原理と組み合わせることで、さらに記憶に残る体験を目指した。

似ている漢字クイズの例

今回は、以下の文字の組み合わせで制作している。
1.「ぬ」と「め」
2.「右」と「石」
3.「氷」と「水」「永」

・構成と目的
構成 A(写しとる前)→フロッタージュ→B(写し取った後)

【「氷」と「水」「永」の場合】
A:一つめの図(「氷」「水」「永」が見える)
↓ フロッタージュ
B:二つめの図(「水」「永」だけが残る)

本作品で体験者はまず異なる漢字を探し、フロッタージュを経て答え合わせをできるような体験設計にした。

・制作の流れ
図の作成→レーザー加工→塗装

 図の作成について
今回採用した文字探しの遊びは、一般的には文字がグリッド状の配置を採用している作例が多かった。
本作品では配置をグリッド状から少しずらした配置にすることで、より見つけづらさが出るように変更した。

 レーザー加工

アクリルの表面に1%の出力の違いを利用して、深さの違う彫刻を施した
→写し取る前後で異なる図を見ることができる仕組みを実現

・ 「ふろったいぽ」の改良

ワークショップを開催した際に子供達の反応から気づいた点を踏まえ、改善を行った。

改善点1:プレート大きさ
対象としている、小学校低学年の子供には、少しサイズ感が大きく扱いづらそうに感じることがあったため、20%程度縮小したサイズを制作した。


改善点2:プレートの形状
 前は角丸の正方形にしていたが、はじめにプレートを触りながらイラストをみる際、角度に前提をつくらず、自由に観察・体験してもらえる余地ができるように、丸い形状に変更した。

 

ワークショップの開催

11月19日 修学院児童館で開催したフロッタージュのワークショップについて
小学2年生 15人が参加。
はじめに、フロッタージュ技法の基本的な説明を行い、身の回りの物を使った実践的な体験を通して、凹凸の写し取りがどのような仕組みで成立するのか考えてもらった。その後、「ふろったいぽ」を使用して、実際に漢字とイラストを写し取り、予想した結果と比較するというプロセスを体験してもらった。

ワークショップ後に、自由回答と選択式を併用、7つの質問を用意したアンケートに回答してもらった。

【アンケート結果】

Q7.ワークショップの感想(自由回答)
楽しかった 驚いた 家でやってみたい つまらなかった 楽しく漢字が覚えられそう 色を塗るのがむずかしかった 他

・アンケートからワークショップ結果について
フロッタージュをこれまでにやったことがある児童に、どこで行ったかを尋ねると、小学校の図工の時間にやったことがあると言っていた。学校の現場でもフロッタージュでの学びが採用されていることが確認できた。

ふろったいぽ自体の難易度に関しては、それぞれの選択肢に回答数が分散していることから、難易度設定のバランスは小学校2年生にちょうど良いものであったと推測できる。
難しいと回答していた児童にとっては、漢字やイメージの意味ではなく、綺麗に全体を塗りつぶす工程に原因があったことが聞き出せた。

ふろったいぽの漢字学習への効果については、Q6や体験中の児童達の反応から傾向としては良いものであると推測する。

 まとめ
「探してフロッタージュ」の制作
フロッタージュのプロジェクトでさらに新たなレパートリーが増え、今回は特にふろったいぽよりもさらに手軽で親しみやすい漢字探しのクイズを作ることができた。
フロッタージュの原理を生かした作品のうちでも、今回のようなライトなものから、複雑な構造を持つ比較的難易度の高い体験まで、対象年齢を個別に設定して様々な趣向の作品を作っていけるのではないかと考える。

「ふろったいぽ」の改良
児童らの生の反応を参考にブラッシュアップすることができた。プレートの大きさや形についてはこれまで深い検討をしていなかったので、今回の改善策を踏まえて対象者に合わせてベストな組み合わせを考えていきたいと思う。

ワークショップの開催
アンケートからはもちろん、今回初めて直接子供に体験してもらうことで、これまで見えなかった改善点やフロッタージュ技法ならではの強みを再認識することができた。また、ワークショップデザインそのものについても書籍を参考にするなどして、企画から考えていったことで、理解を深めることができた。ワークショップ内で用いられる様々な手法に触れ、実践できたことはよかった。これを元に卒業制作のプロジェクトに活かしたいと思う。

ワークショップデザインで参考にした書籍
ワークショップ・デザイン 知を紡ぐ対話の場づくり / 堀公俊 加藤彰
これからはじめるワークショップ / 堀公俊
参加型ワークショプ入門 / ロバート・チェンバース



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