My Hair is Bad「味方」EMI Records
My Hair is Bad「味方」EMI Records

 2020年にリリースされた配信シングル『love』の1曲目に収録されている「味方」。未練や後悔を綴った楽曲の多いMy Hair is Badが、何気ない日常の愛おしさを書き下ろしたことで話題となったラブソングだ。

 My Hair is Badは、2016年にシングル「時代をあつめて」でメジャーデビューした3ピースバンド。テレビ出演やストリーミング配信などを行わずに活動してきたMy Hair is Badだが、アリーナを埋めるほど人気で勢いが途絶えないバンドだ。人気の理由は、マイヘア節といわれる歌詞の押韻やもどかしい感情を代わりに言葉にしてくれているようなリアルさにある。

 “僕の為だと世話焼きを 肌に気を 早起きを”とAメロから、マイヘア節の効いた歌詞の押韻に心を奪われる。“君”に“僕”の為だと言いくるめられ、行動を制御されてしまうことに不満げな態度を見せながらも、そんな日常を愛おしく思っていることがダダ漏れ。

 そんな小さな愛おしさが詰まった「味方」の歌詞のなかでも、何度も聞き返してしまうほどお気に入りの歌詞は、

 “何度も観た映画も お気に入りの漫画も また同じシーンで 泣いてしまうけど
もしも二人の話がさ 映画や漫画になってもさ もう誰も泣かない話にしよう”

 というところだ。“僕”の考えや優しい人柄が伝わる歌詞だと思う。わたしも“僕”と同じように映画や漫画だけではなく、小説といった絵のない言葉や文章だけでも泣いてしまうほど、物語の主人公に感情移入しやすい。泣いてしまう作品ほどお気に入りの作品になり、何度も観てしまっているところにも共感でき、かなりリアル。世の中では、映画や漫画で涙を誘う感動シーンがあっても泣かない人の方が多いだろうけど、この歌詞にとても共感できる人もいて、“歌詞の意味を全部理解できるわけじゃないけど、なんとなく分かるかも”というような絶妙な具合のリアルさがマイヘア節といえるのだ。

 「味方」は落ち込んでいる時でも、充実した毎日を過ごしている時でも、何時聞いても今を安心させてくれる楽曲。マイヘア節の効き目はすごい。