TikTokやYouTube short、Instagramなどで、K-POPアイドルに限らず有名なインフルエンサーがK-POPのダンスを踊っている映像を一度は目にしたことがあるのではないだろうか。近年のK-POPシーンでは、楽曲のプロモーションの一部として他のアイドルグループやアーティストとでコラボし、一緒に踊った動画を投稿していくのがもはや恒例のものとなっている。そのほかにも、縦画面で全身を収めたメンバーごとのダンス映像など、楽曲のサビ部分を用いた動画がたくさん投稿されている。
いかに多くの人の目に触れる機会を増やし、印象付けて楽曲やアーティストを浸透させるかに力を入れているK-POP。日本で一大ブームを巻き起こした楽曲として代表的なTWICEの「TT」など、真似しやすさを重視したキャッチーな振り付けが多く存在する。
そんな中、親しみやすさを残しつつ「魅せる」ことにより特化した、作り込まれた振り付けやステージも数多く存在することをご存知だろうか。ここでは、特に「振り付けに小道具が組み込まれている」という共通点を持つ楽曲を紹介したい。
DREAMCATCHER「YOU AND I」
この楽曲では、どの番組のステージでも共通して、ウエスト部分にスカーフが差し込まれた衣装を着用している。2番の冒頭やラスサビ前ではスカーフを外して手に取り、ダンスに取り入れられている。
そして、この楽曲で用いられているもう一つの小道具が、ステッキ。
2番の冒頭のパートを歌唱するメンバーが、何も持っていなかったはずの手から突如ステッキを出現させるというパフォーマンスが、この楽曲の見どころの一つでもある。低音でのラップパートに合わせて華麗にステッキを捌くパフォーマンスはとても目を惹かれる。このグループのコンセプトである「悪夢」や、K-POPには珍しいロックなサウンドも相まって、ミステリアスでダークな世界観が作り出されている。
VIXX「桃源郷(Shangri-La)」
「東洋ファンタジー」がコンセプトのこの楽曲は、韓国の伝統衣装をモチーフとした衣装や扇を用いた、神秘的な雰囲気のパフォーマンスが特徴的な一曲。楽曲の冒頭、完璧なタイミングで全員の扇子が一斉に開くさまや、扇を閉じると同時にカメラに視線が向く様子には、思わず息を呑んでしまう。
音楽番組によって、歌詞に登場する月や椿が背景に映し出されているものや、床に水面のような映像が映し出されている、足元にスモークが焚かれているものなど、さまざまな演出で幻想的な世界観が作り出されている。
VIXXというグループは、毎度ガチガチに固められたコンセプトと作り込まれた世界観に定評があり、「コンセプトドル」の異名を持っている。そんな彼らだからこそ作り上げることができる、陶酔してしまうようなステージだ。
SEVENTEEN「Pretty U」
筆者の知る限り、小道具が組み込まれた振り付けの中で物理的に最も大きなものが使われているのがこちら。ステージ中央には、なんとソファが…。
この楽曲では、一つのソファを中心にパフォーマンスが繰り広げられる。ソファの前にメンバーが立ってカメラの画角を遮ったり、ソファの後ろの死角もうまく利用したりして、メンバーが入れ替わり立ち替わり現れて歌う姿は、まるでミュージカルのようで見ていて飽きることがない。
楽曲の最後にはソファが左右に分かれてはけていき、ステージを広く使ったフォーメーションでのパフォーマンスが行われる。舞台セットを退場させるというところまでメンバーがやってしまうというのが、13人という人数を最大限活用していておもしろい。
ちなみに、メンバーの背中側からパフォーマンスを撮影した映像が公式から公開されています。音楽番組のカメラでは映せない角度から、通常見えないメンバーの動きも見られるので個人的にはこちらもおすすめです!
ビジュアルのみならず、パフォーマンスのクオリティも高く評価されるK-POP。筆者の所感だが、ここ数年は覚えやすく真似しやすいことが重視され、身一つでできる振り付けが多く、小道具を用いたパフォーマンスがあまり見られなくなったように感じている。
技巧を凝らしてステージ上に創り上げられた世界には、各グループの魅力やパフォーマンス力が、より色濃く表れる。K-POPのユニークなステージングに、少しでも興味を持って貰えたなら幸いである。