「晩餐歌」by tuki. その1

今話題の「晩餐歌」でデビューしたシンガーソングライター・tuki.は、現在16歳の女子高生だ。彼女は13歳の頃からギターを弾き始め、TikTokへの投稿を開始した。
作詞作曲は、日常生活の中で心が動いた瞬間からイメージして制作し、曲ごとにギターやピアノを使い分けている。1stの「晩餐歌」もまた、日常生活と周りの環境が合わさってできたものだ。父親の「人生は3万日ぐらいしかない」という言葉を聞き、今で5000日ぐらい生きていることに、人生の終わりはそう遠い未来でもないと彼女は考えた。その時、美術の授業で『最後の晩餐』と出会って偶然的に生まれたのがこの曲だ。実はこの曲、初めから完成されたものではない。2023年の7月7日にタイトルを出さずサビだけを投稿。その後、曲の1番やCメロの制作過程もTikTokに投稿した。ファンはより身近に彼女の曲制作を見守り、交流することでより良いものを、ファンと共に彼女は作っていった。こうした今までにないSNSの発達によるファンとの近い距離感や交流は、新しいアーティストとしての形を生み出した。
次に出た2ndシングル「一輪花」は『呪術廻戦』のアニメの登場人物である夏油傑が闇落ちする場面に心を動かされたことをきっかけに作った曲だ。友人の恋愛話から影響を受けて歌詞を制作し、内容は失恋から立ち直ろうとするバラードになっている。3rdの「サクラキミワタシ」は、当時まさに卒業を控えているtuki.そのもののリアルな感情をぶつけたものだ。好きな人や学校との別れという寂しい曲。その時その場所で中学生として卒業するという立ち位置で作るということはなかなかない。とても貴重なものだと思う。ここまでの3曲はかなりしんみりとしたものだが、4thの「地獄恋文(インフェルノラブレター)」はこれまでとは違って思わせぶりな男性にキレて地獄に落ちろという曲。普段口に出せない思いを歌で叫んでおり、どこかのびのびとした歌声に聴こえる。そして、6月19日にリリースした「星街の駅で」は、離れて会えない辛さと相手を大切に思っている気持ちが表現されている。この曲も少し切なく悲しい歌だが、他の曲とは違った物語が曲の中で完成されていておもしろい。個人的には、MVも見ておくとより鮮明に物語を捉えやすいのでおすすめだ。
デビューから今現在に至るまで彼女が生み出した曲の数々は、どれも特別な物語ではない。彼女の曲は、自分と周りに居てくれる人々によってできている。恋愛の中で怒りや悲しみ、苦痛などが入り混じる、その全てがまるで経験したかのように丁寧に言葉が紡がれている。それゆえ、聴いている側もその中に没入し、感情移入し、心が動かされる。私たちの身近に存在している出来事だからこそ、より多くの人に共感や人気を与えているのではないだろうか。
また、子供の頃から親と人生について語り合ったり、高校生ぐらいの年齢で恋愛を元にして曲を制作するなど普通の女の子よりも大人びている。この時点ですでに独特の感性や世界観が完成されているのではないかと思うくらいに。しかし、高校生になってダンスをやってみたいと言い、K-POPに憧れているなど年相応の可愛らしい面もある。
そんな彼女の今後は、音楽を死ぬまでゆるゆると続け、あくまでも趣味として楽しむことを大切にしている。顔を出さないのも、そういった考えによるものだろう。
今までにないTikTokから出てきたアーティストの在り方に誰もが注目している。けれど、まだ彼女は高校生までの時間しか歩んでいない。きっと、これから多くの出会いや別れを経験していくことだろう。その度に成長していくtuki.の未来は、ファンとして見届けるのがとても楽しみだ。