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 今回紹介する「晩餐歌」は、2024年1月24日にBillboard Japan Hot 100で総合首位、ソロアーティストとして最年少でストリーミング累計再生回数が1億回を突破するなど、輝かしい功績を持つ曲だ。なぜこんなにも人気を集めているのか。それは、歌詞にあるのではないかと考えている。もちろん、メロディやtuki.の圧倒的な歌唱力も大変魅了されるものがある。しかし、ここで私はあえて歌詞について紹介したい。

 ここからは歌詞についてどんどん深掘りしていこうと思う。これは、一見すると付き合っている2人が別れようとする話のように思える。主観的に綴られ、君という相手との関係が曲中で構成されている。

 始めの部分は、「君を泣かすから」というフレーズがかなり使われている。別れる決意を「そう君を泣かすから」と念押しし、相手を思いやるよりも自分を正当化しているようだ。けれど、「でも」をきっかけに自分の気持ちが溢れ出てきてしまう。ここで登場する「会いたくなんだよね」と「君以外会いたくないんだよね」という真逆の言葉が続いており、とても人間味があっておもしろい。さらに、それに対して「なんて勝手だね」という自分自身から溢れる感情の身勝手さを自覚してもいて、気持ちの整理がつかず葛藤していることがわかる。この部分は、まるで人の心の声を聞いているようだった。このような感情の揺らぎの細かい描写は、飾らない率直な言葉で歌詞を作る彼女だからこそ成し得た。これこそが、多くの人からの共感を集めているポイントなのだろう。

 2番では打って変わって、無理や痛くなるといったマイナスワードで元気がなさそうに感じる。大きく1番と違っているのは「また君を泣かすから」のように過去を前提としていたり、「大体曖昧だったよね」のように振り返る表現になっていることだ。つまり、1番と2番の間に君を泣かせてしまった出来事が起きていたのだ。また「でも」から始まる部分では、「自信がないんだよね」や「変わりたくないんだよね」といった自分の弱さが出ている。ここでは、全体的にネガティブな印象で、君を泣かせてしまったことに対する反省や悲しみが描かれている。その後のフレーズでは「傍に居てくれたのは」と過去を振り返り、「結局君一人だったよね」と君を想っている。後半では、別れる未来に向けて「涙のスパイス」と「残ってしまうだろうけど」という君を悲しませるだろうという描写。「君を泣かすから」ではなく「涙のスパイス」というあえて料理的な表現には、今までとは違う特別な意味合いが含まれているのだろう。

 そして、サビの表現はかなりおもしろい。「何十回の夜を過ごしたって」は過ごす時間の長さを表現しつつも、「晩餐歌」というタイトルから晩餐を過ごすという意味もある。また、サビの回数を重ねるごとに「何百回」「何千回」「何万回」と単位が増え、君への気持ちがどんどん膨れ上がっている。他にも、料理の意味を含んだ表現がされている。「愛してる」は並べるもの、「最高のフルコース」は相手からもらうものと書いてある。それぞれ「愛してる」は食器に、「フルコース」は君もしくは君からの思い、愛ではないかと思う。実際、この曲の歌詞は「愛の存在証明」にすごく執着している。愛を物体化することを望み、君からの愛がないかもしれないと不安になっている。だから、このサビで「愛してるを並べてみて」と、君からの愛を見せてほしいとお願いをしている。けれど、3回目のサビから「並べるから」と自分が愛を見せる側にまわり、最後のサビでは「得られぬような」から「忘れぬような」と愛の価値観が変わっている。この変化はだんだん君に縋っているようにも見える。この断定せずに濁す表現は、聴き手に解釈や考察を委ねている。そのため、私は別れる話だと捉えているが、別の人は仲直りをする話ともとれるだろう。こういった聴く側の自由な思考の余白を残すことで、オリジナルな考えや解釈ができる。曲を考察することを音楽を楽しむ方法の1つとしてtuki.は考えているということなのかもしれない。

 このように、「晩餐歌」は今までになかった晩餐にちなんだ表現を加え、さまざまな解釈や意味を持たせた。この新しい表現と素直な歌詞が多くの人の心を動かしたのではないだろうか。少なくとも、私がこの曲を聴いて出した結論は別れる話だったが、あなたはこの曲をどう捉えるかぜひ聴いて考えてみてほしい。

投稿者

お手伝いさん。好きな果物は檸檬。

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