その執事、優秀。

私が今回紹介するのは「ダーク」な作風のものだ。まあダークにも様々な種類があるだろう。その中でもダークファンタジーを取り上げていく。
そもそもダークファンタジーとは何か、理解している人は多くはないだろう。なんとなく闇属性っぽい話かなぁ、程度の認識だったりする。
定義そのものが難しいという意見もあるが、暗鬱な設定や作風を特徴とし、得体のしれないような、例えばグロテスクな敵と戦い、肉体切り裂かれ血液や体液が飛び散る描写、おびただしい死、希望のない未来……等などの要素を抱える作品を指すのだとか。
さて、私はそういった作品の中で『黒執事』をお勧めしたい。
19世紀末期イギリスを舞台としたパラレルワールドのようなお話で、ブラックコメディやミステリー、オカルト、アクションなど多様な要素を取り入れているのでとても読みやすいものだ。
作者は枢やな先生、名前を聞いたことがある人もいるのではないか。
私の大好きなゲームである『刀剣乱舞』の中で日向正宗のイラストを担当しているだけでなく、これまたヴィランをモチーフとしているゲーム、『ツイステッドワンダーランド』の原案、イラストを担当している方だ。
ここから考えるに、枢先生自体がダーク系統のものを好いているのだろうとも感じる。
名門貴族、ファントムハイヴ伯爵家には知識・教養・料理・武術など、すべて完璧な執事セバスチャン・ミカエリスという男がいた。まだ12歳の幼く我儘な当主シエル・ファントムハイヴの命令を忠実にこなしながら、役立たずの使用人たちの失敗もフォローする姿はさながら優秀な執事と言えるだろう。
そんなファントムハイヴ伯爵家、実は代々政府の汚れ仕事を引き受け、英国裏社会の秩序を守る悪の貴族であり、幼いシエルも「女王の番犬」として任務にあたっていた。さらにシエルには両親を殺害され、自らも誘拐・慰み者になっていたという悲惨な過去があった。そして何よりセバスチャンの正体はその際に出会った悪魔であり、シエルは自らの魂を対価に彼と契約し、復讐を果たすために敵の正体を追っていた──というのが物語のあらすじである。
いわゆるオタクの好きなものが合わさっているというか、悪魔との契約やらヨーロッパやら、人生で興味を持ったことのないワードなどないといっても決して過言ではない。
耽美な絵柄で進んでいくストーリーに感情を揺さぶられる、とても良い作品だ。一度見てみてはいかがだろうか。